スキニーでスタイリッシュなシルエットを重視したスーツデザイン、コンテンポラリーホテルの巨大なウォークインクローゼットをイメージさせるショップの雰囲気。ロープライスに加え、合理的洗練を目指した世界観で、日本における既存のツープライススーツのイメージを刷新した「SUIT SELECT」。
海外進出第1号店として2012年、バンコクのセントラルワールドに出店。以来着実に「SUIT SELECT」のブランドはタイ市場に浸透し、2024年3月時点で10店舗にまで店舗を拡大しています。
タイ設立から現在に至るまでタイでの事業展開の中心として携わってこられたDirectorの戸叶様に、タイと日本のスーツ観の違いについてお話を伺いました。
自己表現としてのスーツ
ーータイに進出以来10年以上事業に携わってこられた中で、タイ人と日本人のスーツに対する捉え方の違いなど感じられることはございましたか?
戸叶●そうですね。まず日本人にとってのスーツは仕事のための服という認識が強く、ビジネス需要が多いです。日本のビジネスマンはスーツを日常的に着用する方が多く、動きやすさや快適さを重視します。一方で、タイではスーツの需要はビジネスだけでなく、着飾る服としての需要が高いのが特徴です。タイではスーツがドレスのように捉えられることが多く、スーツやタキシードなどがパーティーやイベントでもよく着用されます。タイの方は、いかにビシッと着こなせるか、見た目を重視する傾向があるように感じます。
ーー日本とタイのスーツのデザイン的な好みの違いを感じられることはありますか?
戸叶●日本では、スーツはシンプルで落ち着いた色が好まれ、ビジネスシーンに適したデザインが中心です。例えば、無地やストライプなどの定番のパターンが人気ですね。また、黒やグレー、ネイビーなどの落ち着いた色が主流で、日本のビジネスマンはどちらかと言うと控えめなデザインを好む傾向が見られます。
一方、タイではベーシックな色柄に加え、華やかでカラフルなスーツやシャツも好まれます。南国の気候や文化に合わせてか、鮮やかな色合いも人気です。タイの人は、スーツを自己表現の一部として捉えられている方が多く、デザインや色に対するこだわりが強いと感じますね。
パーティーやイベントで映えるタキシードは、自己表現のためのアイテムとして捉えられています。
タイでは明るく華やかなカラーのスーツやシャツが人気。
価値観の壁を超えるには?
ーータイに進出された当初から、そうした価値観やニーズの違いを意識した売り方をされていたのですか?
戸叶●「SUIT SELECT」では「2ライン×2プライス」というシステムを基本としていまして、このコンセプトはタイの立ち上げ当初から現在まで変えていません。また品揃えや価格帯も日本と全く同じ形でスタートをしました。商品の売れ行きやタイ人のお客様のご意見を伺いながら、タイ市場での需要に合わせて徐々に品揃えを調整していきましたね。
例えば、半袖のYシャツ。日本では夏場になるとよく売れましたので、タイでも半袖シャツの品揃えを全体の3割から4割ほど用意していました。いざタイではじめてみると全く売れなくて(笑)、とても驚いたのを覚えています。
また、日本では、Yシャツは無地柄に加え、少しラインの入ったものやチェック柄などの需要も多いのですが、タイでは圧倒的に無地の方が人気です。売れ筋の商品を見ていくと大体好みの系統がわかってきます。それで徐々に品揃えなどを調整していく感じでした。
ーータイで11年事業をやられていて、スーツ市場の変化について感じることはありますか?
戸叶●タイのスーツ市場もこの11年間で大きく変わりましたね。かつては業界全体としてスーツの生地といえばウールという考えが主流で、ポリエステル素材は敬遠されがちでした。それはタイでも同様の傾向が見られましたが、最近では技術の進歩もあり、ポリエステル素材で良質な質感の製品も増えてきたこともあって、タイでも動きやすく楽な着こなしを求める人が増えてきたと感じます。「着飾るためのスーツ」と「機能性を求めるスーツ」といったふうに、需要が二極化してきていると思います。
ーー接客のスタイルについてはいかがですか。
戸叶●「SUIT SELECT」の接客は、タイでも日本と同様に対面でお客様と一緒に商品を選ぶ形をとっています。商品を選んで店の真ん中にあるファンステージ(中央の台)でお客様に寄り添いながらアドバイスをするというスタイルは、ブランドの軸としてとても重要だと考えている為、ここはしっかりと世界共通で統一出来るように心掛けています。
また、スタッフの中には、初めて接客業に関わる人もいますので、基本的なマナーや接客方法は日本と同じようにしっかりと指導しています。日本では当たり前のことでも、文化の違いなどにより、タイではなかなか上手く行かないことも多々あります。
例えば「SUIT SELECT」では、お客様へのお出迎え・お見送りをすることを基本としていますが、とくにタイでは店員がお客様にお見送りをする習慣がなく、浸透させるのに苦労しました。「他のお店はやっていないからやらない」ではなく「他のお店がやっていなからやることが大切なんだ」ということを丁寧に説明することで、時間をかけて浸透させていきましたね。
また、スタッフの教育ではタイの文化や習慣を理解し、尊重することが大切だと考えます。社員とのコミュニケーションも明るく前向きなものを心がけています。
直線をモチーフとした店舗デザイン。中央の台でお客様と一緒に商品を選定する接客スタイルです。
日本で大ヒットしている4Sシャツはタイでも人気です。
今後の展望について
ーーー「SUIT SELECT」の今後の展望について教えてください。
戸叶●2024年3月にチットロム店を新装オープン、またザ・モール バーンケーに新店舗をオープンいたしました。現在、タイでは10店舗を展開していますが、将来的にはさらに店舗数を拡大していきたいですね。
また、オンラインでの販売にもさらに注力していきたいと考えています。WEBを使ったマーケティングに力を入れて、タイのお客様にも、より便利に「SUIT SELECT」の商品を購入いただけるよう充実化を図っていきたいと考えています。
私が考えるグローバル化とは、単に世界共通化するだけでなく、ブランドとして守るべきところを守りつつ、地域ごとの需要や文化にうまくアジャストさせることだと考えています。「SUIT SELECT」のブランドコンセプトを大切にしながら、地域ごとの需要に柔軟に対応することが重要だと考えます。
これまでの経験を生かして、より多くの人に喜んでもらえるような「SUIT SELECT」だからできる新しい価値の提案を広げていきたいですね。
SUIT SELECT THAILAND Official site はこちら
https://www.suit-select.com/th/
SUIT SELECT THAILAND Online shop はこちら
https://shop-th.suit-select.com